当研究室ではコンピュータを用い、数値シミュレーションを行っています。2016年度は、曲面壁に沿う噴流のLES数値解析、DSMC法による推力方向制御装置の数値解析、遺伝的アルゴリズムによる飛翔体のパレート最適飛翔計算の3つの題材の研究を行っています。
短距離離着陸型航空機(STOL)においては、低速飛行時の揚力確保が重要な課題となっている。
そのための方策として、エンジンから出る噴流を翼の上面あるいは下面に沿って流し、
大きな上向きの遠心力の発生によって高揚力を得るという方法が考えられている。
当研究室におけるこれまでの研究で、噴流が旋回している場合に、噴流中心が遠心力から少しずれた方向に移動する現象が確認されていて、
噴流内の平均流速分布を軸対称に設定した初期時刻においては、スパン方向への移動量がコリオリ力の効果により正確に説明できることが判明している。
しかし、時間経過とともに軸対称性が崩れ、移流の影響により移動量がさらに増大していることが判明し、そのメカニズム究明のための研究を継続している。
計算手法として乱流解析用のLES(Large Eddy Simulation)法を用いている。
図 噴流中心移動の可視化
航空機や各種の飛翔体の多くは空力操舵により運動の制御を行うが、動圧が低い状況下では必ずしも操舵が有効に働かない。
そこで機体を制御する手段として、推力方向制御装置(Thrust Vector Control, TVC)が用いられる。TVCには様々な方式があり、機械式と流体式に大別される。
本研究では流体式で2次噴流を用いる方式についてノズル内の流れ場を数値解析し、流れの特性やTVC装置としての性能を調べる。
解析手法としては、DSMC法を用いる。
本手法は、流体の流れを模擬分子の集合の動きとして捉え、コンピュータによる数値解析を行うものであり、
本研究においてはエンジンノズル内の流れを解析し、噴出した分子の持つ運動量の総計から推力の各成分を算出する。
計算においては、流れ場をセル状に分割し、分子の座標移動と分子間の衝突計算は微小時間⊿tごとに行う。
ここで、衝突計算は同一セル内の分子同士のものに限定し、分子モデルは剛体球、衝突は2体衝突のみで、摩擦の無い完全弾性衝突としている。
図 ノズル形状をデュアルスロートノズルにした場合の可視化結果
ロケット推進飛翔体の最適な飛翔経路をコンピュータシミュレーションにより算出する。
飛翔体のシステム性能を実現するには、到達点での速度や飛翔方向、到達に要する時間などの複数の要因が同時に重要になることが多く、
それらの要因は飛翔経路に大きく依存する。それぞれの要因を互いに妥協させつつ、
なおかつ各要因とも可能な限り高性能となる
経路を得るために、パレート最適解という概念を用いる。
本研究においては、生物の進化過程を工学的に模擬した遺伝的アルゴリズムを用いて、パレート最適解となる飛翔経路群を算出する。
図 遺伝的アルゴリズムのフローチャート
野球のボールがカーブするメカニズムについて、多くの実験結果を引用しながら理論的な検討を行い、ボールの上下での流速差による説明よりも、
作用・反作用の法則を用いた説明の方が優れていることを示した。 (論文公開ページへ)
航空機の翼などに発生する揚力のメカニズムについて、どのような説明が物理的にもっとも妥当であるかを議論した。(論文公開ページへ)
・エンジンシステム設計ツールの作成
・エンジン燃焼過程の数値解析
・DSMC法による反射衝撃波の数値解析
・境界要素法による超音速非定常流の数値解析(論文公開ページへ)
・遺伝的アルゴリズムを用いた超音速最適翼形状の設計
・平衡計算を用いた4サイクルエンジン燃焼過程の数値計算
・DSMC法による超音速空力加熱の数値計算
・境界要素法による超音速航空機の空力特性の算出 ...など